ウサギの消化管膿瘍 (肝膿瘍・胃膿瘍)【大阪府堺市の動物病院】

ウサギの消化管膿瘍 (肝膿瘍・胃膿瘍)【大阪府堺市の動物病院】

ウサギの消化管膿瘍はゆっくりと形成され、初期には症状を示すことは少ない。

しかし、腹腔内(お腹の中)で膿瘍が大きくなると、消化管閉塞や穿孔を起こす。原因は不明なことが多く、生前診断は難しいことも多い。なんらかの治療で開腹手術を行った際に、偶然発見されることもある。

この症例は、他院に入院していても状態が悪化してきており、閉塞している恐れがあるからと飼い主さんから手術を依頼されたのだが、手術に耐えられるかわからないくらい状態が悪かった。

手術中になくなってしまう可能性があること、しかし、確かに閉塞している可能性も高く、このまま手術しないで様子をみていても、なくなってしまう可能性が高いこと、などを飼い主さんと相談の上、開腹手術となった。

緊急手術となったが、残念ながら手術中に亡くなってしまったので、飼い主さんの希望があり、飼い主さんの立会いのもと死後解剖を行った。

ウサギの消化管膿瘍 (肝膿瘍・胃膿瘍)【大阪府堺市の動物病院】

写真は正中切開して腹腔内を観察しているところ。
明らかに歪な腫瘤が露出している。腹水も溜まっている。
後にこの腫瘤は、胃に付着している膿瘍だとわかった。

消化管膿瘍ケース1観察1.JPG
消化管膿瘍ケース1観察2.JPG
写真は胃に付着している腫瘤(膿瘍)と白い結節が多発している肝臓
後にこの白い結節は膿瘍だとわかった。
消化管膿瘍ケース1胃潰瘍.JPG
写真は胃の潰瘍病変。

他院で入院中ステロイドによる継続治療が行われていたので、その副作用もあるかもしれない。腫瘍を疑ってステロイド投与とのこと。

今回の状況では、ステロイド投与も選択肢に入れても良いと思うが、通常ウサギではステロイド投与は副作用も大きく、安易にステロイド投与するべきではない

消化管膿瘍ケース1摘出.JPG

写真は病変と思われる部位を摘出したところ。

病理検査に提出した。病理検査結果は、

・肝臓、胆嚢の膿瘍および化膿性腹膜炎
・化膿性胃炎および膿瘍形成、胃潰瘍および糜爛(びらん)

胃穿孔から、化膿性病変および膿瘍形成が行われた可能性があるとのこと。

過去にステロイド投与がされていたのであれば、そのときに胃穿孔が起きた可能性がある。

特に急性胃拡張のときには、ステロイドを投与していなくても胃潰瘍が発生していることも多く、急性胃拡張のときにステロイドを投与すれば胃穿孔を起こす可能性が高い。

胃穿孔も大きな穴であれば症状は出るが、小さな穴であればすぐにふさがるので症状はすぐにはでない可能性がある。

やはりウサギにステロイドを投与するときは、慎重にメリットとデメリットを考えなければならない。

今回は特殊なケースでしたが、ウサギの食欲不振にはまれに閉塞によることがあります。閉塞が疑わしければ、主治医に開腹手術も相談してみてもいいかもしれません。

キキ動物病院
大阪府堺市中区深井北町117-3
072-276-3555

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