甲状腺腫 〜インコ・文鳥:鳥の咳や呼吸が荒いときや開口呼吸(呼吸困難)のときには突然死に要注意!【大阪堺‐小鳥の病院】
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小鳥の病院による、甲状腺腫の原因と治療についての解説記事です
こんにちは。大阪府堺市の小鳥の病院、キキ動物病院です。
セキセイインコや文鳥などの小鳥は、甲状腺腫にかかることがあります。鳥さんが呼吸が荒いときや、開口呼吸(呼吸困難)や呼吸音(キューキューなど)、咳をしているときは、甲状腺腫の疑いがあります。
鳥さんの甲状腺腫では突然死を起こすこともあり、油断できませんが、治療できることも多い病気です。
今回は、そんな小鳥の甲状腺腫の原因と治療について、解説していきます。
甲状腺腫 の原因
インコや文鳥の甲状腺腫の発生原因として最も多いのは、食餌中のヨード(ヨウ素)欠乏です。鳥さんは摂取するヨウ素が少なくなると、甲状腺腫を発症します。
一般的に、小鳥の餌に使用されているシードミックス(混合殻付き餌)には、ヨウ素が含まれていません。そのため、副食やサプリメントでヨウ素を補充する必要があります。
ヒトでは、ヨウ素欠乏性甲状腺腫はかなり少ないので、ヨウ素が欠乏すると甲状腺腫が発生するということはあまり知られていません。そのこともあってか、小鳥の飼育ではヨウ素欠乏症の知識があまり知られておらず、甲状腺腫が多発します。
ただ、ヨウ素の摂取量が多くても甲状腺腫を発症するので、ヨウ素の取りすぎにも注意が必要です。
また、甲状腺腫を誘発する物質(ゴイトロゲン)を多く含む食べ物を食べすぎると、甲状腺腫を引き起こします。
ゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)を多く含む食べ物
・アブラナ科植物(キャベツ、小松菜、ブロッコリー、カブ、なたね、など)
・マメ科植物(大豆など)
・キャッサバ
甲状腺腫 の治療
軽度であれば、ヨウ素を摂取することで治療できます。
しかし、甲状腺腫で動物病院に来院する鳥たちのほとんどが進行した状態で、
ヨウ素摂取では治療に時間がかかりすぎて、治療中に突然死することが多くなります。
鳥さんの甲状腺腫は、症状がみられるときには通常かなり進行しており、軽度の甲状腺腫の治療を開始することは、あまりありません。
重度の甲状腺腫の治療には、甲状腺製剤が使用されます。また、緊急救命措置として、ステロイドを投与すると救命率が非常に高まります。鳥さんは、甲状腺製剤とステロイドにすみやかに反応して、改善することが一般的です。
甲状腺製剤に加えて、心不全の疑いがあれば強心剤も併用します。甲状腺腫を患った鳥さんは、飛ぶときに喀血して死亡することもあるので、絶対安静が必要です。そのため、入院治療が必要なことがほとんどです。
これらの西洋医療の治療に加えて、漢方薬などを併用することでさらに救命率があがります。
治療の現場では、適宜酸素室で看護します。治療上の注意点として、甲状腺腫の治療を開始してすぐに症状が治まったとしても、実際に肥大した甲状腺が正常な大きさまで縮小するには、長期間かかることが多いです。症状が治まっているからと言って、治療を中断しないことが重要です。
また、甲状腺腫と甲状腺腫瘍は症状が同じで、甲状腺腫瘍は治療反応が悪いことに注意が必要です。セキセイインコでまれにみられるので注意してください(臨床獣医師へのメッセージです。)
甲状腺腫 の症状:呼吸が荒い、開口呼吸(呼吸困難)、呼吸音(キューキューなど)、咳、突然死
インコや文鳥の甲状腺腫の症状は、夜や部屋を暗くしたときに悪化することが多いです。
インコや文鳥の甲状腺腫の症状で代表的なものは、呼吸器症状と消化器症状です。
甲状腺腫で最も多くみられる症状として、開口呼吸と呼吸音があります。肥大した甲状腺によって、気管が圧迫されて開口呼吸が生じます。同じく肥大した甲状腺によって、鳴管が圧迫されて呼吸音が生じます。
ヒューヒュー、キューキュー、ギューギューといった呼吸音は「勝手に声が出ている」ように感じられ、進行するとケッケッという咳がでてきます。この咳は、シードを食べている最中や、食べた直後に見られることが多いです。
気管の圧迫がさらに重度になると、呼吸音は常にでているようになり、呼吸困難の症状がでてきます。
呼吸困難の症状として、苦しくて上を向いて呼吸するスターゲイジングという症状や、チアノーゼが見られます。文鳥の嘴は血色が現れるので、文鳥のチアノーゼは嘴の色で非常に分かりやすく現れます。
呼吸困難の症状をしめす鳥さんは非常に危険な状態で、一刻も早く緊急治療が必要となります。
鳥さんは甲状腺が肥大すると食道を圧迫し、シードを食べている最中や食べた直後に「むせたように」少量吐き出します。甲状腺腫が重度に進行すると、餌が食道を通過しにくくなり、そのう内に餌が停留するようになります。この状態が続けば、鳥さんは食欲があるのに痩せて衰弱していきます。
甲状腺腫 の発生状況
セキセイインコやブンチョウに多く、ハト、カナリヤ、コンゴウインコでも多いです。発生率は高くないですが、オカメインコをはじめ、他のどの種類の鳥でも甲状腺腫は発症します。
セキセイインコやブンチョウは甲状腺腫の症状がでやすいのですが、他の種類の鳥は症状がでにくく、見落とされている可能性があります。
中高齢で多くみられますが、ときどき幼鳥でも甲状腺腫が発症することがあります。
甲状腺腫誘発物質(ゴイトロゲン)を含まない野菜
甲状腺腫誘発物質(ゴイトロゲン)を含まない野菜には 、サラダ菜、リーフレタス、春菊、パセリ、ニンジン、シソ、などがあります。
甲状腺腫を患っている鳥さんはゴイトロゲンを含む野菜ではなく、かわりにこれらの野菜を食べると安全です。
まとめ
今回のまとめです。
鳥さんが開口呼吸をしていたり、呼吸音を発していたら、甲状腺腫を疑って、一刻も早く動物病院につれていってあげてください。そして、できるだけ入院治療をお願いするようにしてください。
鳥さんの甲状腺腫は命にかかわる病気です。症状がでているときは重度に進行していることが多いので、定期的にレントゲン検査をお願いして、早期発見に努めてあげてくださいね。
このブログで、鳥さんの甲状腺腫のことが広く知られるようになって、救命率が向上すればうれしいです。
小鳥の病院
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