眼球突出 のうさぎ(目が飛び出てる、目が大きい)の原因と治療~不正咬合 胸腺腫 膿瘍 エンセファリトゾーンなど【大阪うさぎ病院キキ動物病院】
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うさぎ専門治療の病院による、うさぎの眼球突出の原因と治療について解説です
こんにちは。大阪堺のうさぎ病院、キキ動物病院です。
今回は、うさぎさんの眼球突出(目が飛び出てる、目が大きい)の原因と治療についてです。
うさぎさんの眼球突出(目が飛び出てる、目が大きい)は、無治療だと失明してしまうだけでなく、痛みで食欲がなくなり衰弱死してしまうこともあります。そのため、応急処置的に眼球摘出手術が必要なことも多いです。
眼球摘出手術をしないとどうなるのか、眼球摘出手術をしたあとの、うさぎさんの生活についても解説しています。
眼球突出 (目が飛び出てる、目が大きい)の原因
① 不正咬合
② 眼窩膿瘍
③ 緑内障
④ 前大静脈症候群(胸腺腫・リンパ腫)
⑤ 眼窩腫瘍
⑥ 外傷
① 不正咬合
不正咬合とは、上下の歯の噛み合わせが悪い状態のことです。
うさぎさんの不正咬合を無治療で放置していると、歯の根元の部分(根尖)が
顎の骨の方に伸びていきます。
特に上の奥歯(臼歯)は目の下に近いので、目の下に炎症をおこします。そして目の下が腫れて目を外に押し出します。
不正咬合が原因の眼球突出は、ほとんどの場合で片側性です。(片目だけ眼球突出)
不正咬合→眼球突出→角膜潰瘍がおこりやすくなる→角膜潰瘍を繰り返す→ぶどう膜炎に進行→眼圧があがって緑内障を発症→さらに眼球突出が悪化、ということもあります。
とにかく、不正咬合はいろんな病気に関係するので、定期的な歯のチェックは非常に重要です。逆に不正咬合を放置すれば、いろんな病気につながってきます。
② 眼窩膿瘍
うさぎさんの不正咬合は無治療で放置していると、眼窩(目の真下)に炎症が起こり、眼球突出(目が飛び出てる、目が大きい)が生じることがあります。
しかし、炎症だけで重度の眼球突出がおこることは多くありません。
通常うさぎさんに重度の眼球突出がみられるときは、不正咬合の炎症だけでなく、膿瘍が形成されていることが多いです。
眼窩膿瘍が原因の眼球突出はほとんどの場合、片側性です。
うさぎさんの眼窩膿瘍に関しては、『目の病気 うさぎの目やにはどんな病気で起きる?』に詳しい解説があるので、参考にしてください。
③ 緑内障
うさぎさんの緑内障では、通常疼痛(痛み)による流涙や眼瞼痙攣がみられます。
結膜と胸膜の充血や、目やにがあることも多いです。
緑内障が原因の眼球突出は多くの場合、片側性です。
若齢での緑内障の発症は、ほとんどがエンセファリトゾーンが原因です。
うさぎさんの緑内障は、ほとんどがぶどう膜炎や虹彩膿瘍によって眼圧が上がることによって発生します。
そして、ぶどう膜炎や虹彩膿瘍は、一部の例外をのぞいてエンセファリトゾーンが原因のことが多いです。
特に若齢での緑内障は前述のとおり、ほとんどがエンセファリトゾーンによるものです。
エンセファリトゾーンは突然死を引き起こします。
緑内障の治療と並行して、エンセファリトゾーンの治療もすることによって、突然死の発生率を下げることは非常に重要です。突然死の発生率を下げる意味でも早めに治療を開始することも重要になります。
中高齢での緑内障の発生では、白内障も併発していることも多いです。(白内障のように見える角膜浮腫の場合もあります。)
エンセファリトゾーンによる突然死については、以前のブログ『斜頸!突然死もおこりうる危険性を解説 眼振にも注意』で解説しているので参考にしてください。
④ 前大静脈症候群(胸腺腫・リンパ腫)
うさぎさん以外の哺乳類では、多くの種類で成長すれば胸腺が退縮しますが、うさぎさんは正常でも胸腺が退縮しません。
正常の胸腺よりもさらに大きくなったのが胸腺腫です。
胸腺が大きくなると、前大静脈を圧迫し、前大静脈がうっ滞します。
その結果、第三眼瞼(瞬膜)や眼球突出(目が飛び出ている)がおこります。(同じ原理で、胸腔内前縦隔内リンパ腫でも、眼球突出がおこります。)
これを、前大静脈症候群といいますが、眼球突出が(片目ではなく)両目同時におこるのが特徴です。
前大静脈症候群での眼球突出の特徴は、
① 両側性
② 指で押すと戻る
です。
絶対ではありませんが、他の原因で眼球突出がおこっている場合は、ほとんどの場合、片側性でまぶた越しに指で押しても固い感触があります。
うさぎさんの胸腺腫や前縦隔リンパ腫は、命にかかわる救急の病気です。両目の眼球突出をみたら、一刻も早く動物病院で治療をうけてください。
胸腺腫の症状や治療については、以前のブログ『呼吸が荒い (呼吸困難)うさぎは救急の病気?:熱中症、突然死、いびき、胸腺腫、心臓病などを解説』
でも解説しているので、参考にしてください。
呼吸が荒い (呼吸困難)うさぎは救急の病気?:熱中症、突然死、いびき、胸腺腫、心臓病などを解説【大阪府堺市のうさぎ病院-キキ動物病院】
⑤ 眼窩腫瘍
症状としては、眼球突出、流涙、眼脂(目やに)などがあります。
眼窩の腫瘍が大きくなってくると、眼球を圧迫して突出してきます。そうすると角膜が涙液で十分に覆われなくなって、角膜潰瘍を併発します(露出性角膜症) 。
眼窩腫瘍の中では、リンパ腫が最もよくみられます。
⑥ 外傷
うさぎさんの外傷による眼球突出では、流涙がおこっていることが多いです。
次第に眼脂(目やに)がでてくるようになります。
多くが同居のペットによる咬傷です。ケンカしてうさぎさんの目が腫れることを繰り返すなら、一緒に遊ばせないなどの工夫が必要になります。
応急処置的に、眼瞼閉鎖術が必要となることもあります。さらに重度になると眼球摘出術が必要になります。
眼球突出 (目が飛び出てる、目が大きい) の治療
不正咬合や前大静脈症候群による眼球突出の場合は、不正咬合や前大静脈症候群による治療を適切に行うことで、通常は眼球突出は治まります。
しかし、重度の不正咬合や眼窩膿瘍、眼窩腫瘍、緑内障、外傷による眼球突出の場合は眼球摘出術が必要となることも多いです。
重度の眼球突出は、時間の経過とともに細菌感染が抑えきれなくなり、抗生剤も効かない耐性菌も繁殖し、痛みから重度の消化器疾患を併発して衰弱死してしまう危険性が高まるからです。
突出した目に繁殖した細菌が体内に侵入して拡散したり、膿瘍を形成する危険性もあります。
片側の眼球摘出であれば、術後のうさぎさんの生活の質は意外とそんなに変わりません。
眼球摘出手術後の日常生活ですが、意外と普通に生活していることに少しびっくりするかもしれません。(ただし、眼球摘出した方向から(見えない方向から)手を近づけたりすると非常にストレスを感じるうさぎさんも多いので、そこは配慮してあげましょう。)
眼球摘出は命をつなぐために必要と言われても、心の整理ができない気持ちはよくわかります。
いくら大丈夫といわれても、眼球摘出はかわいそうに感じて躊躇するやさしい飼い主さんは多いです。
迷いながら眼球摘出を獣医師に強いられるように選ぶのは、後悔のもとになってしまいます。
主治医とよく相談して治療方針は決定してくださいね。いい獣医さんは、心の整理ができて納得できるまで、話をきいてくれるはずです。
辛いと思いますが、心の傷が癒されるように心から祈っています。
まとめ
今回のまとめです。
うさぎさんの眼球突出(目が飛び出てる、目が大きい)の原因
① 不正咬合
② 眼窩膿瘍
③ 緑内障
④ 前大静脈症候群(胸腺腫・リンパ腫)
⑤ 眼窩腫瘍
⑥ 外傷
うさぎさんの眼球突出が、両目か片目かということは重要です。
両目の眼球突出は胸腺腫の疑いがあり、緊急状態です。
緑内障による眼球突出の場合は、エンセファリトゾーンが要因のことも多く、突然死をひきおこすこともあるので、やはり緊急状態とみてください。
不正咬合による眼球突出は、歯の定期健診で予防できるので、意識してみてください。
うさぎさんの眼球突出(目が飛び出てる、目が大きい)の治療
まず原疾患(眼球突出の原因の病気)を治療することを考えますが、眼球突出が重度の場合は眼球摘出術も考えます。
眼球摘出によって、うさぎさんの生活が制限されることは意外とないです。
今回は眼球突出のまとめ的内容となっているので、眼球突出で困っている人がいれば、この記事を紹介してみてください。
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