不正咬合 のうさぎ 臼歯の歯切りを無麻酔ですることのメリット・デメリットについて【うさぎ専門治療 キキ動物病院】
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うさぎ専門治療病院による、無麻酔の歯科処置のリスクについての解説記事です
こんにちは、うさぎ専門治療と統合医療のキキ動物病院です。
無麻酔の歯科処置のメリットとデメリット、麻酔下での歯科処置のメリットとデメリット、両方知った上で、飼い主さんご自身が選ぶことが重要です。
決して無麻酔の歯科処置が、麻酔下での歯科処置よりもすべてにおいて優れているわけではありません。
近年、一方的に無麻酔を奨励する、あまりに不誠実な獣医師が多いので、みるに見かねる状況だと思い、まとめました。
うさぎの臼歯を無麻酔で処置することのメリット
獣医師のメリット
・時間がかからない(仕事が楽)
・スタッフが少人数で大丈夫(人件費がかからない)
・集客が容易(無麻酔の方が一般的に良いイメージがあるので、無麻酔治療をアピールすれば集客につながる)
・無麻酔の歯科処置によって、不正咬合の進行がはやくなり(不正咬合は加齢でも進行しますが)、症状の再発までの時間が短くなれば、さらに病院がもうかる。
以上の通り、獣医師側には、無麻酔の歯科処置を勧めるのに十分な理由があります。
飼い主様のメリット
・時間がかからない。
・安い。
・麻酔による蓄積性のデメリットがないので、うさぎに優しいと思える。
「できるだけ優しい治療を」と願う、多くの飼い主様のお優しい心は尊敬しますし、お気持ちもお察しいたします。ですが、麻酔の蓄積性のデメリットは、医学的には証明されていません。臨床現場でフラットに観察していても ? なところも多いです。
不正咬合のうさぎ 無麻酔処置のデメリット
・1番奥の臼歯は無麻酔ではほとんどの場合確認できない。
(当然、無麻酔では1番奥の臼歯はほとんどの場合、無処置となります。これは、解剖学上の問題であって、技術上の問題ではないことがほとんどです。重度に進行しているとみえることもありますが、そのレベルまで気づくことができずに放置になることが問題です)
・見落とされた奥歯の臼歯は意外と耐える子が多いので、逆にそれがアダとなって潜在的に不正咬合が進行する。
・少しずつ不正咬合が進行する可能性が高い。
うさぎさんの顎の骨(頭蓋骨)は、実は少しのチカラで変形します。ほんの少し変形しただけで歯列が大きく変化します。その影響は、ペンチで処置されたうさぎさんの前歯の不正咬合をみれば、容易に想像できます。
あまり知られていない臼歯の歯切りの麻酔で突然死が起こりやすい症例
ただし、麻酔下での歯科処置で、禁忌の症例があります。
あまり知られていませんが、重度(軽度ではなく)の心不全をもっている子は、麻酔で不整脈を起こして突然死します。治療も必要ですし、麻酔前には検査が重要な理由はここにあります。
これはうさぎさんに限らず、どの動物でも(ヒトでも)同じです。
麻酔時の原因不明の突然死は多くの場合、このケースです(他の原因のこともありますが)重度の心不全症例で、麻酔をかけてしまう。
これはうさぎを専門的に診ている獣医師でもあまり知らず、それにより、昔はうさぎの麻酔事故が多かったので、麻酔が怖いとのイメージが定着している事情があります。
キキ動物病院では状況に応じて、うさぎの 不正咬合 にあえて無麻酔でなく麻酔処置をすることも
キキ動物病院では、小鳥の嘴の処置も、うさぎさんの歯科処置も、無麻酔で行う技術はあります。
獣医師側もできれば、無麻酔で処置したいのです。決して無麻酔の方がもうかるからとか、楽できるから、技術がないから、というわけではないのです。
ちなみに経験上、小鳥の無麻酔での処置の方がはるかに難しいです。
(小鳥の嘴の処置はペンチなどで尖っているところを折るのではなく、キチンとローターで削っています。そこに舌があばれまくるわけです。)
当然、興奮しすぎる小鳥は危ないので、麻酔下もしくは鎮静下で嘴処置をしますが、これはうさぎさんの歯科処置にも共通していえることです。
それでは、小鳥では無麻酔で処置をすることが多くて、うさぎでは麻酔をかけることが多いのはなぜでしょうか。
その選択には、麻酔をかけることによる、うさぎにとっての健康上のメリットがあるからなのです。
決して、麻酔下の処置の方が儲かるわけではないです。できれば獣医師やスタッフも楽したいです。こういった現場の事情は、あまりにも知られていないなと思います。
現在、無麻酔の歯科処置増加で、顎の変形によるウサギの不正咬合が増加中
昔はよく実施されていたのですが、近年、ペンチでうさぎさんの前歯を折るペットショップは激減しています。その理由は、上記で述べた通り、顎が変形して不正咬合になるからです。
残念ながら今、同じことが無麻酔の歯科処置の増加で、起こってきています。
自分の前歯を、麻酔無しで折ったり削ったりする姿を、ぜひ想像してみてください。顎に非常に強い力がかかるのが、想像できると思います。
ヒトですら顎への負担が想像できるのに、小さなうさぎさんの顎に限って、一切負担がかからない、なんてありえません。
歯というのは、もともと上下のチカラには強くても、横からのチカラには弱い性質があります。
無麻酔時の歯科処置は、横からチカラを入れざるを得ません。
ヒトで横から同じチカラを何度もかけていると、かなり高い確率で、動揺歯(歯がぐらつく)→重度の歯周病→抜歯へと進むはずです。
(私がそれを経験しました。すごく悲しかったし、なんとか歯を温存できないものかと最後までもがきましたが、だめでした)
ヒトは歯科で虫歯治療をする時に、当然鎮痛をして治療していますよね。うさぎさんでは鎮痛(麻酔)なしで歯科処置をすると、痛みに耐えている可能性があります。
歯の構造がちがうのでヒトと同じようには考えられませんが、少なくともヒトの場合は無麻酔(無鎮痛)が手放しで良いのであれば、治療でもっと積極的に取り入れられているはずです。
その瞬間は「無麻酔(できるだけ薬を使わない、一見優しそうな治療)で済んで良かった。」となるかもしれませんが、その後のうさぎさんの健康にとって、果たしてそれが本当に最善の治療なのか。と言う話なのです。
まとめ:
キキ動物病院では「無麻酔だから安全、優しい。」と安易に決め付けるのではなく、状況に応じて、最善の治療法を提案します
キキ動物病院では「無麻酔だから安全、優しい。」と安易に決め付けるのではなく、状況に応じて、最善の治療法を提案します。
無麻酔の歯科処置は、獣医師にメリットも多いので勧める先生も多いですが、ぜひ、デメリットもよく知った上で選んでいただければと思います。
大阪堺のうさぎ病院
キキ動物病院
072‐276‐3555
大阪府堺市中区深井北町117‐3
参照:うさぎ無麻酔歯切り裁判
一番奥を無麻酔でみようと開口機を使用しているのが事故のもとだけど、
— 大阪堺のペットクリニック-キキ動物病院 (@oosakasakaiah) 2019年6月26日
開口機を使わないと無麻酔ではしっかりと確認はできないということでもある
うさぎの医療過誤裁判について https://t.co/JAGP4AuUfW